この事例の依頼主
40代 女性
相談前の状況
始業時刻の5分前に出社しなかったことなどを理由に解雇されたという正社員の女性の相談を受けました。この女性は、1カ月前に代表者から始業時刻の5分前に出勤してすぐに仕事に入れるよう準備することを求められていました。しかしお子さんを保育所に送るために始業時刻ギリギリの出勤となることもありました。また、時にストレートな発言が、経営トップの不興を買っていました。会社が解雇を通告してきたとき、代表者は「解雇予告手当さえ払えば自由に解雇ができるもの」と誤解をしていました。
解決への流れ
女性は、4人の未成年の子を育てるシングルマザーでした。預貯金はあまりなく生活に余裕がなかったことから、速やかに解雇無効を前提に地位保全と賃金仮払いの仮処分を申し立てました。言うまでもありませんが、労働契約では、始業時刻前にはたとえ5分といえども早く出勤する必要はありません。仮処分の申立て当初から勝利を確信し、予想通り、裁判所から解雇無効の判断を得ました。女性は、使用者の義務や労働者の権利というものに対する理解のない経営トップの下で働き続ける気持ちは失ってしまい、1年分の給与と引き換えに会社都合での退職を選択しました。
労働契約法16条で、従業員を解雇をするためには、客観的に合理的な理由が必要であり、それに加えて、社会通念上も相当であることが必要とされています。この会社のトップのように、給与1か月分の解雇予告手当を払いさえすれば解雇ができると誤解している経営者には、残念なことにしばしば遭遇いたします。しかし誤解に基づく解雇は、たいてい争いさえすれば撃破することができます。解雇通告を甘んじて受ける前に、労働問題を専門に扱っている弁護士に相談してみることをお勧めいたします。