この事例の依頼主
年齢・性別 非公開
自動車に跳ねられて重傷を負い、高次脳機能障害等の後遺障害が残った方の事案のご相談です。生きておられるのが不思議なくらいの重大な事故で、さらに過失割合も大きな争点であり、ご本人はもとより、ご家族も、治療中の段階で何からどう手をつけて良いか分からない状況でご相談に来られましたので、私の方で事案を整理し直して、示談交渉から受任して窓口対応を行なうこととなりました。
症状固定後、当初の事前認定手続きでは、併合7級(高次脳機能障害9級)と判断されましたが、高次脳機能障害の等級認定が低いとしてご納得されませんでした。そこで、高次脳機能障害の労災認定4要件を、依頼者の症状や日常生活状況につぶさに当てはめて吟味したところ一点突破可能な要件を見い出し、異議申立てが通るよう、かつ後の訴訟で覆されないよう、戦略的に異議申立てを行ったところ、これが成功し、併合5級(高次脳機能障害7級)を得ることができました。その後、相手方保険会社と示談交渉を行いましたが、過失割合や労働能力喪失率など多数の論点において隔たりが大きかったため訴訟を提起しました。訴訟では、相手方保険会社は、保険会社顧問医の意見書なども提出して高次脳機能障害の等級はもっと低いとして、等級認定自体を争ってきました。そこで、私は、段ボール箱1箱分もの膨大なカルテを紐解きながら、医学文献や法律文献も多数駆使して、顧問医意見書の妥当性や保険会社側の主張を徹底的に強く争い、親族だけでなく、周囲の関係者複数人からもヒアリングを実施して、事故前と事故後の就労実態やできなくなったことを多数の陳述書にまとめて証拠として提出し、裁判官に理解してもらえるよう「見える化」して、徹底的に争いました。後遺障害等級のほかにも、過失割合や基礎収入額なども争点でしたが、いずれの争点も徹底的に主張立証を尽くした結果、裁判所からは、概ね被害者側の主張を認める形での和解案が示されました。ただ、裁判所が和解案を提示したあと、さらに裁判所も巻き込んで和解金額の増額交渉を行なった結果、裁判所和解案よりもさらに10%以上増額した6000万円での和解を成立させることができて、依頼者にもご満足頂けた事案です。
◆「障害」を「見える化」して正当な評価につなげる重要性◆●高次脳機能障害は、外見上は健常人と変わらないため、他人に理解されにくい「見えない」後遺障害の典型です。そのため、自賠責保険の事前認定手続きでも、想定外に低い等級が認定されることもありますので、納得できない場合にはまず異議申立から相談することが肝要です。●もちろん、異議申立ては一般的には通らないことの方が多いため、事案にもよりますが、交通事故事案に精通した弁護士と記録を突き合わせて様々な角度から認定根拠を見直して、「見えない」障害内容を「見える化」することで、より上位の正当な後遺障害等級を獲得できる場合があります。●また、訴訟では保険会社側は、被害者の「できること」を抽出して争ってきますので、事故前に比べて、日常生活や社会生活上、どのような変化があったか、何が「できなくなったか」について、具体的かつ可視化できる形で武器となる証拠をどれだけ収集できるかがカギでしょう。また、顧問医意見書が提出されても、カルテを精査し、関係者のヒアリングを行なってさらに重要な証拠を裁判所に提示できるか、最終的には書面での説得力という点も極めて重要となってきます。◆裁判所が示した和解案も、粘り強く交渉して増額◆●裁判所和解案は、裁判所が記録を吟味した上で提示される和解案であり、判決と同じではないものの、交通事故事案においては判決内容と余りに乖離する和解案は通常提示しません。●そこで、通常は、裁判所和解案を受け入れる形で進行することが多いですが、納得できない場合には依頼者と徹底的に議論を尽くした上で、和解が決裂して判決となった場合の減額・長期化リスクも踏まえながら、裁判所に対して和解金額についての法的見地からの意見を述べて増額交渉を行なうことも重要です(相手方も保険会社がついていて、裁判所からのお墨付きの和解案の数字が示されている以上、単に「増額して」というだけでは到底通る話ではありません。)。●本件では、最終的な裁判所和解案から交渉のみで500万円以上増額できましたので、依頼者にもご満足頂けました。