この事例の依頼主
50代 男性
相談前の状況
迷惑防止条例違反(痴漢事件)の被疑者が弁護士会の当番弁護を要請しているということで、当職が警察署に接見に伺いました。被疑者の人は、50代の男性で前科として、強制わいせつ事件、迷惑防止条例違反2件(そのうち1件は起訴猶予)がある人でした。過去にそのような前科があったことから、警察としても完全に被疑者のことを疑ってかかっている事案でした。
解決への流れ
接見で駆け付けたところ、本人としてはやっていないということでしたので、警察の取り調べに対する対応の仕方についてきちんと説明をしました。痴漢の事案で一番多いのが、身柄拘束が長引くよりは罪を認めて釈放されたいという動機から、やってもいないことについて簡単に罪を認めてしまうというケースです。迷惑防止条例違反は罰金刑になることがほとんどであることから、身柄拘束が続くのであればお金を支払えば出れるのであればいいやとすぐに認めてしまう人が多いわけです。当職からは、やっていないのであればやっていないということを貫くべきであるというアドバイスをしました。一度認めてしまうと、後で覆したとしても、それを受け入れてもらうことは著しく困難になる。それと、被害者が誤解をした可能性があるのであれば、どうして誤解した可能性があるのかという点についてきちんと説明をし、供述調書にとってもらうべきであるということを話をしました。電車の中の具体的な状況(立ち位置など)を聞き取るとともに、その時の動きを詳細に聞いたところ、加害者が引き込まれたカバンを引っ張ろうとした際に被害者が触られていると誤解した可能性があるという点が浮き彫りになりました。その点について取り調べできちんと説明するように話をしました。
検察は、2日拘束した後に勾留請求をしたようですが、裁判所は勾留請求を却下しました。おそらく、被疑者の弁解が合理的であったことと、被害者の供述があいまいだったことが原因であろうかと思われます。痴漢事件は、えん罪が多い事案です。最初に弁護士にどのようにアドバイスされるかで取り調べに対する対応の仕方も変わってきます。早期に弁護士に接見し、捜査機関に都合のいい証拠集めをさせるのを防ぐ必要があります。