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隣の席の同僚から香水の強烈な匂いが・・・会社に「席替え」を要求できる?
2013年10月07日 19時40分

職場で、香水の匂いがきつい人が隣の席にいる――。女性向け掲示板「発言小町」にこんな悩みが寄せられている。投稿によれば、相談主の隣にいる男性社員の香水の匂いがきつくて、閉口しているという。「浴びるようにつけてるのでは?」と思うほど強烈な匂いで、「くさいな」と感じながら仕事をしているのだそうだ。

匂いといえば、タバコの匂いも嫌煙家にとってはきつい。いまは社内禁煙が進んでいるが、スーツにタバコの匂いを染み込ませているヘビースモーカーもときどきいる。そんな同僚が隣の席だったら、ちょっと辛いかもしれない。

職場の自分の席の隣に、香水やタバコの匂いが強烈な人がいたら、どうすればいいのだろう。本人に直接、匂いについて改善を求めるのは気がひける。ならば、会社に座席を移動してもらうなど、なんらかの対策を要求できるだろうか。労働問題にくわしい中村新弁護士に聞いた。

●会社側には「職場環境配慮義務」があるが……

「使用者(会社)は、労働者が働きやすい職場環境を保つように配慮すべき義務を、労働者に対して負っている、とした裁判例があります(三重セクシュアルハラスメント事件判決 津地判平成9年11月5日等)。これを『職場環境配慮義務』と言います」

中村弁護士はこう切り出した。すると、香水やタバコの匂いについても、会社側が配慮すべきだと要求できるのだろうか。

「この職場環境配慮義務は、主にハラスメントが起きた場合に持ち出される概念です。したがって、本件のような場合に、ただちに『会社側の義務違反』を指摘できるかは微妙なところです」

残念ながらこうした「匂い」については、必ずしも法的な要求ができるとは限らないようだ。そうなると、我慢する以外に、社員が何か打てる手はないのだろうか。

「労働者にとって働きやすい就労環境を整えることは、会社にとっても生産性の向上につながることです。職場の上司に環境改善を相談することに、問題はないでしょう」

●喫煙所に衣類用消臭スプレーを設置してもらうのも一手

上司に相談する――とは、具体的にはどういうイメージだろうか。

「具体的には、たとえばタバコの匂いが気になる場合、喫煙スペース近くに衣類用の消臭スプレー剤を置き、喫煙後に、衣服にかけるように掲示してもらうのも一手ではないでしょうか。そういった程度の配慮でも、タバコの匂いはかなり軽減されると思われます」

なるほど、それなら誰にも大きな負担とならずに済みそうだ。中村弁護士はさらに続ける。

「一方で、香水については、いったん付けると匂いを軽減することが難しく、香水を付けている人の自己決定権との衝突も生じかねないので、やや難しいところです。

まずは同様の悩みを持つ人が周囲にいないか聞いてみてはどうでしょうか。複数の従業員が同じ悩みを持っているのであれば、複数で上司にかけあい、香水を使っている従業員に対して上司から『使用量を控えて』と指導してもらうことが考えられます」

なるほど、会社としてもバランスを欠かないよう、双方に配慮が必要ということだろう。そうなると「席替え」についてはどうなのだろうか……。

中村弁護士は「そうした対応をとったうえで、それでも問題が解決しないようであれば、座席の配置についての検討を求めてもよいでしょう」と話していた。なるほど、やはり物事には順序があるようだ。まずは穏便で、手間もかからない方法から、順番に試していくべきということだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

職場で、香水の匂いがきつい人が隣の席にいる――。女性向け掲示板「発言小町」にこんな悩みが寄せられている。投稿によれば、相談主の隣にいる男性社員の香水の匂いがきつくて、閉口しているという。「浴びるようにつけてるのでは?」と思うほど強烈な匂いで、「くさいな」と感じながら仕事をしているのだそうだ。

匂いといえば、タバコの匂いも嫌煙家にとってはきつい。いまは社内禁煙が進んでいるが、スーツにタバコの匂いを染み込ませているヘビースモーカーもときどきいる。そんな同僚が隣の席だったら、ちょっと辛いかもしれない。

職場の自分の席の隣に、香水やタバコの匂いが強烈な人がいたら、どうすればいいのだろう。本人に直接、匂いについて改善を求めるのは気がひける。ならば、会社に座席を移動してもらうなど、なんらかの対策を要求できるだろうか。労働問題にくわしい中村新弁護士に聞いた。

●会社側には「職場環境配慮義務」があるが……

「使用者(会社)は、労働者が働きやすい職場環境を保つように配慮すべき義務を、労働者に対して負っている、とした裁判例があります(三重セクシュアルハラスメント事件判決 津地判平成9年11月5日等)。これを『職場環境配慮義務』と言います」

中村弁護士はこう切り出した。すると、香水やタバコの匂いについても、会社側が配慮すべきだと要求できるのだろうか。

「この職場環境配慮義務は、主にハラスメントが起きた場合に持ち出される概念です。したがって、本件のような場合に、ただちに『会社側の義務違反』を指摘できるかは微妙なところです」

残念ながらこうした「匂い」については、必ずしも法的な要求ができるとは限らないようだ。そうなると、我慢する以外に、社員が何か打てる手はないのだろうか。

「労働者にとって働きやすい就労環境を整えることは、会社にとっても生産性の向上につながることです。職場の上司に環境改善を相談することに、問題はないでしょう」

●喫煙所に衣類用消臭スプレーを設置してもらうのも一手

上司に相談する――とは、具体的にはどういうイメージだろうか。

「具体的には、たとえばタバコの匂いが気になる場合、喫煙スペース近くに衣類用の消臭スプレー剤を置き、喫煙後に、衣服にかけるように掲示してもらうのも一手ではないでしょうか。そういった程度の配慮でも、タバコの匂いはかなり軽減されると思われます」

なるほど、それなら誰にも大きな負担とならずに済みそうだ。中村弁護士はさらに続ける。

「一方で、香水については、いったん付けると匂いを軽減することが難しく、香水を付けている人の自己決定権との衝突も生じかねないので、やや難しいところです。

まずは同様の悩みを持つ人が周囲にいないか聞いてみてはどうでしょうか。複数の従業員が同じ悩みを持っているのであれば、複数で上司にかけあい、香水を使っている従業員に対して上司から『使用量を控えて』と指導してもらうことが考えられます」

なるほど、会社としてもバランスを欠かないよう、双方に配慮が必要ということだろう。そうなると「席替え」についてはどうなのだろうか……。

中村弁護士は「そうした対応をとったうえで、それでも問題が解決しないようであれば、座席の配置についての検討を求めてもよいでしょう」と話していた。なるほど、やはり物事には順序があるようだ。まずは穏便で、手間もかからない方法から、順番に試していくべきということだろう。

(弁護士ドットコムニュース)

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