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「逮捕された人、無料で支援」30周年迎えた当番弁護士制度、残された課題は?
2022年09月13日 10時12分
#法曹 #刑事弁護 #当番弁護士 #被疑者国選

当番弁護士制度が全国に広がって30年を迎えたことを記念した日弁連主催のシンポジウムが9月6日、都内の弁護士会館であり、制度設計に携わった弁護士らが歴史や課題を語り合った。

当番弁護士制度が全国に広がって30年を迎えたことを記念した日弁連主催のシンポジウムが9月6日、都内の弁護士会館であり、制度設計に携わった弁護士らが歴史や課題を語り合った。

●逮捕後、弁護士に無料で相談できる

当番弁護士制度とは、逮捕された人が無料で1回、弁護⼠を呼んで相談できる仕組みのことで、本人だけでなく、家族や友人からも依頼できる。

国の制度ではなく、弁護士たちがお金を出し合い、各地の弁護士会が毎日当番を決めて運営している。2021年現在、弁護士の37%が当番弁護士に登録している。

その背景について、当時を知る山口健一弁護士は次のように話す。

「30年前、弁護士がつくのは多くの場合で起訴されてから。ボクシングで言うと、相手から殴られ放題。誰も味方がいない中での捜査や長時間の取り調べ、自白の強要がおこなわれ、冤罪が多発した」

刑事事件では、当事者にお金がないなどの理由で弁護人をつけられないときは、国の費用で弁護人をつける「国選弁護制度」がある。しかし、当時は起訴されないと使えなかった(被告人国選)。

日弁連では、1989年に松江市で開催された人権擁護大会以降、被疑者(容疑者)段階でも弁護士をつけられる「被疑者国選」を求める活動を続けてきた。当番弁護士制度もその活動の一環で、公的な仕組みがない中でのいわば応急処置だった。

制度は1990年9月に殺人冤罪で知られる「みどり荘事件」のあった大分県からはじまり、1992年には全国に広がった。弁護士会だけでなく、裁判所も被疑者への告知などを実施、各地の市民がつくった「当番弁護士を支援する市民の会」の活動などもあり、社会に定着するにいたった。

当時、支援に加わった人の中には、俳優の奥田瑛二さんや竹下景子さん、作家の佐木隆三さん、椎名誠さんら著名人の名前もある。

●認知度については課題残る

30年間運用されてきた当番弁護士制度だが、認知度についてはまだ改善の余地があるという。要請率は全国平均で28.6%。地域差も顕著で、トップの福井県が69.5%なのに対し、最下位の群馬では6.7%にとどまっている(2019年)。

背景には、各都道府県警が被疑者に対して、制度を利用できることを十分に伝えていないこともあるようだ。

●被疑者国選の拡充も目指す

ただし、前述の通り、当番弁護士制度はいわば弁護士たちによる「ボランティア」。日弁連は公的な制度として、被疑者国選の拡充を求めていく方針だ。

被疑者国選自体は、2006年からスタートしているが、徐々に拡充しているものの、現在の対象は勾留による身体拘束を受けている被疑者に限られる。逮捕段階については今も国の制度がない状況だ。

九州大学・東京経済大学名誉教授の大出良知弁護士は、「当番弁護士制度の質量をさらに高めるとともに、できるだけ速やかに逮捕段階での被疑者国選制度の実現を目指してほしい」と話した。

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