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国税局「脱税告発」全件公表へ…税理士「一罰百戒の効果への期待を感じる」
2017年06月29日 09時48分

国税局の査察部、いわゆる「マルサ」が刑事告発した今年4月以降の事案について、国税局がすべて公表する方針だと報じられた。

NHKなどの報道(6月15日)によれば、国税庁はこれまで、守秘義務などの観点から発表していなかったが、国民の納税への理解を広げていくためにも公表に踏み切るという。法人、個人の名称、脱税の手口や額などが発表されることになる。

今回、国税庁が公表に踏み切った理由はどのようなものがあるのか。また、どのような影響があるのだろうか。遠山優里税理士に聞いた。

国税局の査察部、いわゆる「マルサ」が刑事告発した今年4月以降の事案について、国税局がすべて公表する方針だと報じられた。

NHKなどの報道(6月15日)によれば、国税庁はこれまで、守秘義務などの観点から発表していなかったが、国民の納税への理解を広げていくためにも公表に踏み切るという。法人、個人の名称、脱税の手口や額などが発表されることになる。

今回、国税庁が公表に踏み切った理由はどのようなものがあるのか。また、どのような影響があるのだろうか。遠山優里税理士に聞いた。

●手口も具体的に解説

「国税庁は毎年6月頃に前年度の『査察の概要』を公表しています。『平成28年度査察の概要』は前年以前のものと比べて大きく異なる点がいくつか見受けられました。特に変わった点は、件数や率などの表がメインだったものが、文章での解説が大幅に増えたということです。また脱税の手口について納税者名をイニシャル表記し、手口もかなり具体的に解説されています。

そして、今まではなかった『査察の今後の取組』という項目が追加されています。ここでは平成29年度には、消費税受還付事案、国際事案などに重点的に取り組むことが明記されました。

査察制度は、一人の罪や過失を罰することで、他の多くの人々が同じような過失や罪を犯さないよう戒めとする『一罰百戒』の効果を通じて、適正・公平な課税の実現と申告納税制度の維持を行うためにあります。『査察の今後の取組』を読むと、公表に踏み切ることで、一罰百戒の効果を更に高めたいという国税庁の強い思いが感じられます」

公表することで、抑止力につながるのか。

「今後、公表が一般化した場合、従来よりも脱税していたことが世間に知られる機会が増えることが予想されます。告発後は、恐らく銀行や取引先から取引を打ち切られ、事業継続は極めて困難となるでしょう。

甘い気持ちで脱税すると、バレたときの代償はとても大きいのです。脱税も他の犯罪と等しく罪です。気の毒ではありますが、罪を犯している以上、公表されたとしてもそれは仕方のないことではないかと思います。

隠していいのは日々の善行だけ、所得隠しは人生を大きく狂わせるものと心得てください」

●「脱税の規模が小さくても、厳しい処分をする傾向」

最近の脱税事案について、どのような点に注目しているのか。

「そうですね。平成28年度は、1件あたりの脱税額が最も少なくなりました。これは、国税当局が脱税の規模が小さくても、悪質な納税者には厳しく処分するという対応を行った結果ではないかと思います。そして、やはり査察調査の一罰百戒の効果が出ているということだろうと思います。

最近の傾向として、従前は申告所得税、法人税などの立件告発案件が中心でしたが、近年は消費税における脱税事案に力を入れる傾向になってきています。不正還付事案は、いわば国庫金の詐取ともいえる悪質性の高いものであるからでしょう。

以上を踏まえ、今後は査察部が独自に情報収集し、調査着手する事案だけでなく、税務署が手掛けた税務調査の中で重加算税を多額に課すような悪質な事案について、査察事案に切り替えて脱税事件として立件告発することも増えてくるのではないでしょうか。

適正誠実に申告納税を行っている納税者にとって脱税は許しがたいものであり、事案の規模の大小にかかわらず、厳しく調査・処分をして欲しいというのが国税庁への期待であり要請だと思います。

今後は脱税額が低い案件でも立件告発する傾向は続いていくものと考えられます」

【取材協力税理士】

遠山 優里(とおやま・ゆうり)税理士

都内税務署、東京国税局調査部で法人税・消費税・源泉所得税調査に従事した経験を持つ。東京国税局総務部事務管理課主任分析専門官、都内税務署統括国税徴収官などを歴任し、平成28年税理士登録。

事務所名 : 税理士法人 原・久川会計事務所(平塚橋事務所)

URL: https://www.zeikei-support-tokyo.com/

(弁護士ドットコムニュース)

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