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「タトゥーの外国人にも配慮して」 温泉の「入れ墨」禁止ルール、もはや時代遅れか?
2019年12月06日 09時59分

外国人の観光客が激増する中、国内の旅館・温泉などで、タトゥー(入れ墨)をめぐるルールの変更が迫られている。

外国人の観光客が激増する中、国内の旅館・温泉などで、タトゥー(入れ墨)をめぐるルールの変更が迫られている。

●伊香保温泉でも外国人客の増加が見込まれている

伊香保温泉で知られる群馬県渋川市は11月中旬、伊香保温泉観光協会と伊香保温泉旅館協同組合に対して、タトゥー(入れ墨)をした外国人の入浴をできるかぎり認めるよう要請した。

渋川市は、2020年東京五輪・パラリンピックの開催にともなって、ニュージーランドとモーリタニアを対象とした「ホストタウン」に登録されている。

市によると、たくさんの外国人が訪れることが見込まれており、とくにニュージランドの先住民、マオリ族にはタトゥー文化があることから、今回の配慮をもとめる要請につながったということだ。

それでも国内では、暴力団などを連想させるため、いまだに入浴を断っている旅館・温泉が少なくない。そもそも、入れ墨(タトゥー)を理由に入浴拒否することは法的に問題ないのだろうか。足立敬太弁護士に聞いた。

●「入れ墨禁止」が合理性のあるルールだった時代もあったが・・・

「一般的には、店や民間施設を利用させる・させないは、店主など、店側が自由に決められることになっています。

しかし、入れ墨を理由として一律拒否とするのは、合理性を欠く差別であるとして、憲法14条違反・公序良俗違反として扱われる可能性が、少なくともこれからの時代では出てくると思います。

日本で、入れ墨の印象が悪くなったのは、戦後に暴力団員が好んで入れ墨を入れたことが背景にあると言われています。

つまり、ヤクザ・暴力団員が威勢を示すのに、詰めた指や入れ墨を使ったことで、戦後日本では『入れ墨=反社会的』というイメージができあがったのです。

そのため、格式やブランドイメージを保つためにも、暴力団など、反社会的勢力を排除する目的で『入れ墨お断り』というルールが、一般的に広がりました。この時代の『入れ墨お断り』は一応合理的であったと言えます」

●令和時代のルールとしては時代遅れになりつつある

「ただ、暴力団など、反社会的勢力の排除に関して言えば、現在は、『私は反社会的勢力とは無関係です』という誓約に署名させたうえで、違反した場合はすぐに契約解除したり、場合によっては詐欺罪で告訴する方式が一般的です(表明保証)。

したがって、暴力団排除の口実でも、入れ墨の一律拒否は不要です。そもそも暴力団排除の成果で、暴力団員数が減り続けている一方で、経済ヤクザのように入れ墨をしない反社会的勢力が増えています。

また、タトゥーは海外では文化とされていたり、ファッションとして取り入れる日本人も増えたりと、入れ墨と暴力団員との相関関係はほとんどなくなってきています。

もはや、『暴力団排除のため』という口実で『入れ墨禁止』、しかもタトゥーをしている理由も検討せずに一律に入浴を断るのは、令和時代のルールとして、合理的とは言いがたい段階に入りつつあると考えられます」

●「入浴着」を貸し出す案

「とはいえ、入れ墨を不快に思う人がいるのも事実ですので、たとえば『入浴着』を貸し出すなどの策は検討してもいいのではないでしょうか。

入浴着は、たとえば手術跡や火傷跡などを人前にさらしたくない人などが着用して温泉を楽しむもので、タトゥーを隠すためにも使えるはずです。

(編集部注)厚生労働省ホームページ:入浴着を着用した入浴にご理解をお願いします
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000213520.html

手術跡や火傷跡を隠すのはOKで、タトゥーを隠すのはNG・入浴拒否というルールに合理性はありません。また海外では、人前で全裸をさらさないよう、最初から入浴着を着用する国柄も多いです。

以上のように、『一律禁止』ではなく、みんなが楽しめて、海外からの観光客も良い思い出を作れるような解決策を考える時期にきているのではないでしょうか」

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