プロ野球読売巨人軍の名誉監督、長嶋茂雄さんが6月3日、肺炎のために亡くなったことが報じられた。享年89歳。
選手、監督として日本プロ野球界に数々の功を打ち立てたスーパースターは、球場外でも常にテレビや新聞紙面をにぎわせた。
はからずも長嶋さんが「事件」に巻き込まれ、その名前が新聞やテレビに躍ることもしばしばで、判例にも名前は刻まれている。
長嶋さんの取材メモが“流出”した裁判は、新聞社と元社員との争いに発展した。企業のアンバサダーを35年つとめた「セコム」をめぐる法廷闘争もあった。判例や事件報道からその一端を振り返ってみたい。
●インタビュー記事事件
読売新聞内の部署である「運動部」が職務上収集し、営業秘密として管理していた長嶋さんらに対する取材のメモや、インタビュー原稿を、従業員が不正に取得し、知人に開示するという事件があった。
読売新聞東京本社は、不正競争防止法に基づいて、営業秘密の使用差し止めや開示の禁止、情報の廃棄や、原稿などの引き渡しを求め、併せて不法行為に基づく損害賠償も請求している。
この事件は最高裁まで争われたが、情報の廃棄や損害賠償など一部の請求が認められている(東京地判平成27年2月27日、知財高判平成27年12月24日、最決平成28年7月21日)。
●「セコムしてますか」でお馴染み
長嶋さんはセコムのCMに長年出演していたことで有名だ。
そのセコムに類似した「セゴム」などの表示を付して営業活動をしていた者らが、不正競争防止法違反を理由としてセコムから訴えられた事件がある(東京地判平成17年7月12日)。
この訴訟では、セコムの周知性・著名性を示す事情の1つとして、長嶋茂雄さんを起用したCM等の宣伝広告活動を広く展開していたことが主張されている。
●関根勤さん語る「ベンツ事件」
上野駅付近にベンツを停車させ、そのまま試合先まで電車で移動してしまったことがあったそうだ。
試合終了後、そのことを忘れてしまっていた長嶋のもとに、警察署から連絡があった。警察は、長嶋さんのベンツが盗まれた可能性も考慮して警察署で保管していた。
長嶋さんは、警察からの電話に「ベンツはうちにありますよ」と答え、車庫を空けたところ、ベンツはなかったという。
これはタレントの関根勤さんがYouTubeの動画で語ったエピソード。
「本当か?」と思わせ、嘘かまことかわからないような逸話が長嶋さんには少なくない。
「いわゆる」「ひとつの」「メークドラマ」など、"長嶋節"もまた多くの人を魅了し、愛された。