8669.jpg
定年後「再雇用」の安易な賃下げにNO! 75%減の提案は「違法」、高裁判決確定
2018年04月15日 09時34分

再雇用の条件として、賃金を25%相当に減らす提案を会社がしたのは不法行為にあたるとして、会社に慰謝料100万円を支払うよう命じた福岡高裁の判決が確定したと朝日新聞が伝えている。原告と会社の双方が上告したが、最高裁が3月1日に不受理の決定をしたという。

希望する人が65歳まで雇用されることを企業に義務づけた高年齢者雇用安定法の趣旨に照らせば、定年前と再雇用後の労働条件に「不合理な相違が生じることは許されない」と高裁判決は指摘。会社側が提案した再雇用の条件は「生活への影響が軽視できないほどで高年法の趣旨に反し、違法」と認めたという。

再雇用に際しての賃下げを不法行為とする判決が確定したことで、今後どのような影響がありそうか。労働問題に詳しい白川秀之弁護士に聞いた。

再雇用の条件として、賃金を25%相当に減らす提案を会社がしたのは不法行為にあたるとして、会社に慰謝料100万円を支払うよう命じた福岡高裁の判決が確定したと朝日新聞が伝えている。原告と会社の双方が上告したが、最高裁が3月1日に不受理の決定をしたという。

希望する人が65歳まで雇用されることを企業に義務づけた高年齢者雇用安定法の趣旨に照らせば、定年前と再雇用後の労働条件に「不合理な相違が生じることは許されない」と高裁判決は指摘。会社側が提案した再雇用の条件は「生活への影響が軽視できないほどで高年法の趣旨に反し、違法」と認めたという。

再雇用に際しての賃下げを不法行為とする判決が確定したことで、今後どのような影響がありそうか。労働問題に詳しい白川秀之弁護士に聞いた。

●不当な賃下げに「警笛」

ーー今回の高裁判決確定をどう捉えますか

「これまで、本件のような事案は、不本意ながら賃金減額の労働条件に応じざるを得なかった労働者が正社員との待遇格差を労働契約法20条違反で争うことが多かったです。今回は、再雇用に至っておらず、従業員としての地位確認、賃金請求は棄却されたようですが、再雇用の拒否が不法行為と判断された事案です」

ーー高齢者雇用を進める趣旨を逸脱する再雇用の条件だと感じました

「高年齢者雇用安定法は、高年齢者が少なくとも年金受給開始年齢までは意欲と能力に応じて働き続けられる環境の整備を目的としています。企業は(1)定年年齢の引上げ、(2)継続雇用制度の導入、又は、(3)定年の定めの廃止のいずれかを講じる必要があり、継続雇用を希望する高年齢者全員を継続雇用することが事業主に原則として義務付けられました。

今回は、収入が75%も減るという労働条件の提示は、はじめから労働者に対して無理難題を言い、継続雇用を諦めさせようとするものなので、65歳までの雇用を確保するという継続雇用制度の導入の趣旨に反し、違法性があると判断したようです」

ーー再雇用に際して賃下げは常態化しているのでしょうか

「独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査によると、継続雇用者の給与は全体の平均で定年到達時の約7割の水準であり、定年後の賃金減額が常態化しており、賃金減額提案のため、継続雇用を諦めた人は多数いるのではないかと思われます。

あまりに不当な労働条件切下げを行う会社に対しては、損害賠償請求の支払を命じられる場合もあることを前提に交渉をする必要があると言えます。本事案は、再雇用に際する会社側の不当な賃金減額に警笛を鳴らす意味合いがあるでしょう」

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る