2023年7月の性犯罪関連法改正から2年。しかし、「いまだ課題は多い」として、さらなる法改正の必要性をうったえる集会が8月28日、東京・永田町の衆院第一議員会館で開かれた。主催は、性被害の当事者団体の「一般社団法人Spring」。
この集会には、日本と同様の課題を抱える韓国や台湾、香港の関係者らも登壇。各国の最新の制度を紹介しながら、日本に残る問題点について議論が交わされた。
日本からは、性被害者を支援している寺町東子弁護士が登壇し、2023年法改正を振り返るとともに、性犯罪の公訴時効の課題を指摘した。
●公訴時効「5年延長」の限界
寺町弁護士が焦点をあてたのは、公訴時効(一定期間が過ぎると事件を裁判にかけられなくなる制度)の撤廃やさらなる延長の可能性だ。
2023年の法改正により、性犯罪の公訴時効は一律で5年延長された。たとえば不同意性交等罪は10年から15年に延長され、18歳未満の被害では被害者が成人するまでの期間が時効に加算される仕組みも導入された。
しかし性犯罪被害には、若年層であるほど、被害の認識に時間がかかることや、自責の念や羞恥心、報復への恐怖などから申告を諦めるといった特殊性がある。
寺町弁護士は「被害を相談できるまでに10年以上かかる人も多い。延長は依然として短すぎる」と強調した。
さらに内閣府調査(2020年)に基づき「相談の9割が5年以内」との説明で延長幅が決まったことに「相談できなかった6割の人々や、相談できるまで10年以上かかった人たちが切り捨てられている」とし、実態調査が不足していると批判した。
●韓国では「子どもへの性犯罪」は時効撤廃
一方、韓国では2011年に13歳未満の子どもや障害のある人への性犯罪について公訴時効を撤廃。証拠がある限り、長期間経過した事件でも起訴・有罪認定が可能になっているという。
寺町弁護士は、韓国の裁判官にヒアリングした結果を紹介。「証拠が十分であれば裁判所は事実認定をおこない、そうでなければ起訴されない。日本と同じプロセスが機能している」と説明した。
また、近年は犯行の動画や画像が保存・流通するケースが増えており、「客観的証拠から過去の事案が発覚するケースが増えている。証拠があるのに時効で免責されることに正義があるのか」と問いかけた。
公訴時効制度については、2023年改正時に撤廃を求める意見も出たことから、2028年に見直しが予定されている。